「初心者が実践的に学ぶ」とは? ~専門家の誤謬~
岩波データサイエンス刊行委員会メンバーによる連続する2つのツイートを見ていただきましょう。
「ベイズ統計を基礎から学ぶ」というと (1)スパムフィルタとかのナイーブベイズ近似をベイズの代表と思う (2)主観確率の公理に詳しくなる (3)無情報事前分布の通になる (4)特異モデルや漸近論を過度に重要視する,などが連想されますが,いずれも「初心者が実践的に学ぶ」とはずれるような気がします
— baibai (@ibaibabaibai) 2018年1月16日
実践的にベイズを使うとすると「小地域推定のようなサンプルの異質性に階層モデルに対応する」「ランダム効果や過分散に混合モデルで対処する」「時間を入れて状態空間モデル」というのが押さえるべき三大トピックのように思います.あとは空間モデル・欠測・有限混合分布かな. https://t.co/bRC6hLpSAL
— baibai (@ibaibabaibai) 2018年1月16日
最初のツイートは「初心者が実践的に学ぶ」の話をしています。
ところが、それを受けたはずの2つ目のツイートは完全に「実践的にベイズを使う」話になっています。
正直、2つ目のツイートの内容は全く初心者向けではありません。
「実践的」かつ「押さえるべき三大トピック」なのは確かですが、これがすんなりと理解できる初心者はいないでしょう。
専門家はこういう間違いをやりがちです。
つまり、自分が初心者だったころのことをまるで覚えていないかのように振る舞うのです。本人は初心者向きの話をしているつもりでも、実際のところは全く初心者向きではない(もしかすると、本当に頭が良くて初心者時代が無かったのかもしれませんが)。
ベイズモデリングの世界
まだ刊行されてはいませんが、『ベイズモデリングの世界』はおそらく初心者向きではなく、「最先端の研究者から見た俯瞰的な状況解説」になっていると思われます。
初心者がこの本を読んでも「何が書いてあるかほとんどわからない……」となるでしょうから、手を出すのは他のベイズ入門書を読んでからの方が良いと思います。入門書の紹介はあるみたいなのでそこだけ読むのも手かもしれません。